お金の歴史と金利の歴史
お金は私達が生活する上で欠かすことのできない存在です。ではお金とは一体何なのでしょうか。お金が生...
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2016年1月、日銀がマイナス金利政策を発表し、大きなニュースになりました。
多くの方が、マイナス金利って何?と感じていると思うので、少し説明をしていきましょう。
まずは、銀行にお金を預けると利息が発生する理由からです。
預金に利息がつく理由、これは私達が銀行にお金を貸している状態だからです。
意外に思う方もいるかもしれませんが、実は利息の正体はお金のレンタル料なのです。
レンタルショップでDVDを借りるときにお金を払いますよね?
銀行の仕組みもそれと似たようなものです。
私達が銀行にお金を貸しているので、それに対するレンタル料が発生しているのです。
なぜ銀行がレンタル料を払ってまで他人のお金を預かるかというと、銀行は預かったお金にさらに高いレンタル料(金利)をつけて、他に貸し出すことで利益を稼いでいるからです。
そして銀行自体も、さらに大きな銀行に預金を預けています。
このさらに大きな銀行というのが、冒頭で述べた日銀(日本銀行)のことです。
日銀は中央銀行と呼ばれる銀行専用の銀行であり、金融政策を決め、世の中に流通しているお金の量をコントロールしています。
一般の銀行は、一定の金額を日銀の口座に預けることが法律で決まっていて、そのお金を使って他行への振込を行っています。
今回言われているマイナス金利は、銀行が日銀に預けているお金にかかる金利です。
これからマイナス金利の影響で、銀行が日銀に預ける分のお金は、何もしなくても少しずつ減っていくことになります。
つまりこれは銀行の利益が減るということです。
現在は銀行にのみ適用されているマイナス金利ですが、既にヨーロッパではスイスやドイツが国債や大口預金にマイナス金利を導入しています。
アメリカでは一般の口座でも、一定の残高を下回ると維持手数料が必要となります。
マイナス金利が影響して銀行の利益が減ると、日本でもこのようなことが起こる可能性もあります。
では日銀はなぜマイナス金利を始めたのでしょうか?
簡単に言うと景気を良くしたいからです。
銀行は株式会社ですから、利益を追求しなくてはいけません。
しかしマイナス金利が始まった事で、日銀にお金を預けると何もしなくても利益が減ってしまう事になります。
銀行の利益は主に貸し出したお金に対する利息です。
マイナス金利の影響で、何もしなくても利益が減るという事は、今まで以上の利益を上げるには、今までより多くの金額を貸し出さなくてはいけません。
そのため多くの企業にお金を貸し出し、そのお金で企業が設備投資を行い、新しい商品や技術が生まれたり、個人だとこれまでよりローンの審査が通りやすくなったり、限度額が高くなったりすることがあるわけです。
このように金利が変わることで私達の生活にも少なからず影響があるのです。
日銀は日本で唯一通貨発行権を持っている銀行です。
つまり日本のお金は日銀が作っているわけです。
一般の銀行が手段として持っている、お金を集める方法としては、預金者を増やす以外にも、日銀からお金を借りる方法があります。
ただし日銀からお金を借り入れる時は、金利がかかります。
この金利のことを政策金利と言います。
政策金利は基本的に金融市場のバランスによって決められます。
このバランスというのは景気のことです。
景気が悪いときは、金利を低くすることで今までより借りやすくして、多くの人にお金が行き渡るようにします。
逆に景気が良いときは、金利を高くして利息を稼ぐと同時に、バブルが起きないようにするのです。
日本では長い間低金利の状態が続いているので、景気が良くなることで金利が上がるというのを想像しづらいと思いますが、景気が良くなると世の中にお金が溢れている状態になるため、借りても返せるという意識が高くなるといいます。
そしてこの循環が続くことでさらに景気が良くなっていくのです。
日本の10年間の政策金利推移
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2016年 |
0.1% |
0.1% |
0.1% |
0.1% |
0.1% |
0.1% |
0.1% |
0.1% |
0.1% |
0.1% |
||
2015年~2009年 |
0.1% |
0.1% |
0.1% |
0.1% |
0.1% |
0.1% |
0.1% |
0.1% |
0.1% |
0.1% |
0.1% |
0.1% |
2008年 |
0.5% |
0.5% |
0.5% |
0.5% |
0.5% |
0.5% |
0.5% |
0.5% |
0.5% |
0.3% |
0.3% |
0.1% |
2007年 |
0.25% |
0.5% |
0.5% |
0.5% |
0.5% |
0.5% |
0.5% |
0.5% |
0.5% |
0.5% |
0.5% |
0.5% |
2016年10月現在
ちなみに心理学の世界では、景気に関する実験で100人村実験というものがあります。
100人規模の村を2つ作り1つの村には「この村は景気が良いですよ」、もう1つの村には「この村は景気が悪いですよ」という噂を流しました。
すると実際に、好景気と噂を流した村は好景気になり、不景気と噂を流した村は不景気になりました。
この実験で景気というものが人々の心理状態に左右されるということが明らかになっています。
では次に、預金金利にも影響する国債について説明します。
国債とは国が元本を保証した債券のことです。
簡単に説明すると、国債を買うと私達が国にお金を貸した状態になり、利息を得る事が出来るということです。
元本保証があるため、投資としてはとても手堅く、イメージとしては定期預金のような感じです。
投資対象の1つである株の場合は、お金を出して会社の権利の一部を買います。
会社の売上が上がれば株価も上がり利益を得ることが出来ますが、逆に売上が下がると株価も下がり損をしてしまうこともあります。
ですが国債の場合は国が元本を保証しているため、損をする心配がありません。
1年国債から40年国債まであり満期を迎えると購入時の金額と、それに応じた利息を得ることが出来ます。
しかし国債は投資の1つであり、国が元本を保証する性質上、国家が破産するとお金は返ってこなくなるという特徴があります。
そのため、その国の財務状況が健全か見分けることが国債投資のポイントになります。
ではどうすれば国の財務状況が健全か見分けられるかというと、ここでも金利が影響します。
これはあなたが他人にお金を貸すところを想像すると分かりやすいと思うのですが、1番の親友にお金を貸して欲しいと言われるのと、数年ぶりに会うクラスメイトに貸して欲しいと言われるのでは信用度が違いますよね?
国債の世界でもそれは同じで、信用が低い国(人)がお金を借りるには、貸す側のリスクが高くなります。
そのためそのリスクに応じて金利が高く設定されています。
つまり信用が低い国は国債の金利が高く設定されていて、沢山お金を返さなくてはいけないのです。
ヨーロッパのギリシャでは前政権が財政を誤魔化していたことが発覚し、一時は国家破産するかどうかの状態になりました。
その時の国債の金利は36%を超え、もはや投資というよりギャンブルという状態になっていました。
ギリシャの国債金利の異常さは、日本の国債金利を見ると一目でわかります。
日本の10年物国債の金利
年別 | 日本国債の金利 |
---|---|
2016年 |
-0.035% |
2015年 |
0.380% |
2014年 |
0.565% |
2013年 |
0.721% |
2012年 |
0.860% |
2011年 |
1.147% |
2010年 |
1.187% |
2009年 |
1.358% |
2008年 |
1.515% |
2007年 |
1.697% |
バブルの頃は金利が6%を超えるような時もあり、お金持ちであれば銀行に預けた利子だけで生活できると言うような話もありました。
現在の日本では、多くの銀行が普通預金の金利を0.02%と設定していて、100万円を1年間預けた場合だと200円の利息が入るという事になります。
預金の金利を決めるのは銀行であり、銀行ごとに自由に設定してよい事になっているため、世の中の景気に合わせて変動しますが、私達のように預金をする側の人でも、ある程度金利が変わる時期を予測することができます。
金利を予想するのに重要になってくるのが、まず政策金利です。
政策金利は別名、短期金利と呼ばれています。
銀行は日銀に一定の金額を預けなくてはいけないと法律で決まっているため、このお金が足りなくなると、余っている他の金融機関から借入れを行います。
この借入れを行う場所を短期金融市場と呼び、この市場には金融機関だけが参加できます。
短期金融市場は、その名の通り今日借りて明日返すなどの短期の取引で利用され、この貸し借りにも金利が発生します。
この金利は無担保コール翌日物と呼ばれ、日銀が決めている政策金利が影響しています。
日銀は景気が良くなりそうになると短期金融市場からお金を減らし、景気が悪くなりそうになるとお金を入れて増やします。
そうすることで、短期金融市場にお金が減ると無担保コール翌日物の金利が上がり、増えると金利が下がります。
無担保コール翌日物は銀行がお金を集める手段なので、普通預金や1年未満の定期預金の金利に影響します。
ここ20年間は政府や日銀が低金利にして世の中にお金が回るような政策をとっていたので、普通預金の金利がどんどん低くなっていったわけです。
これに対し1年以上の定期預金などの長期金利は、10年物以上の長期国債の金利にある程度連動します。
これは、債券を売る(供給する)ということは資金を手に入れる、債券を買う(需要する)ということは運用するということなので、債券「相場」の動きが、長期金利の動きにそのまま影響するからです。
国債は買う人が増えると価格が高くなる反面、金利が低下し、売る人が増えると価格が安くなる代わりに金利が高くなります。
そのため長期国債の金利に変化があれば、定期預金の金利に変化があると考えられるわけです。
住宅ローンには主に変動金利と固定金利のものがあります。
金利が低く人気の変動金利から説明していきます。
変動金利のローンは、各金融機関とも半年に2回ペースで金利の見直しを行っています。
この見直しの際に影響するのが短期プライムレートです。
短期プライムレートとは、銀行が財務状況の良好な優良企業に貸し出しを行う際に、1年以内の短期貸し出しであれば最も低い金利で貸し出しをすることです。
メガバンクが決める短期プライムレートの利率が全国的な基準の1つになるため、これを見ていけば連動する住宅ローンの変動金利がどう変化するか予測することが出来ます。
ではこの短期プライムレートがどのように決まっているかといえば、これも日銀の決める政策金利が影響しています。
短期プライムレートも、無担保コール翌日物と同じように金融機関同士がお金を貸し借りする時に発生する金利に連動していて、その金利をコントロールしているのが日銀の決める政策金利です。
短期プライムレートの推移
年 | 最頻値 |
---|---|
2016年~2009年1月 |
1.475% |
2009年1月~2008年11月 |
1.675% |
2008年11月~2007年3月 |
1.875% |
2007年3月~2006年8月 |
1.625% |
2006年8月~2001年3月 |
1.375% |
現在の住宅ローン金利は、マイナス金利の影響でかつてないほど低い水準となっていますが、これから政策金利が変化すると、一概に変動金利の方がお得とは言えなくなるかもしれません。
固定金利の決め方は、10年物以上の長期国債に連動しています。
考え方としては長期国債の金利プラスアルファが住宅ローンの固定金利だと思ってください。
現在は変動性のローンの方が金利が低くなっていますが、これは長らく続いた低金利政策やマイナス金利が影響してのことです。
アベノミクスで量的緩和をして市場に出したお金は、いずれ回収しなくてはなりません。
そうすると政策金利の見直しも行われる可能性が高く、その時に固定金利のローンが、変動性ローンよりも金利が低くなっていることは十分にありえます。
・金利とはレンタル料である
・預金で利子が貰えるのは銀行にお金を貸しているから
・様々な金利に日銀の政策金利が影響している